平成19年度年金改正

1.申し出による年金支給停止制度

平成19年4月から受給権者が申し出をすれば、年金の全額の支給を停止することが出来ます。国民年金でも、厚生年金でも同じ制度が導入されます。

たとえば、老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給権者が老齢基礎年金と老齢厚生年金の全額の支給停止を申し出れば、それ以降の老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給停止されます。

しかし、支給停止の申し出は将来に向かって撤回することが出来ます

この申し出による支給停止がないと、次のように年金受給辞退という受給権者の意志が尊重されない結果となります。

@年金請求を行わないことにより年金を辞退していた受給権者が、年金受給の必要性が生じた時点で裁定請求を行うと、年金支給が開始されるとともに、時効消滅していない過去5年分の年金も合わせて支払われることとなります。

A老齢基礎年金・老齢厚生年金については、繰下げて受給することも出来ますが、65歳の受給権発生時点から裁定請求時までの期間に応じた増額が行われた年金が支給されることとなります。


2.老齢厚生年金の繰り下げ制度

平成19年4月以降、老齢厚生年金の受給権者が、受給権を取得した日から1年を経過する前に老齢厚生年金を請求していない場合は、社会保険庁長官に老齢厚生年金の繰下げの申し出が出来るようになります。

但し、老齢厚生年金の受給権が発生したとき、又は受給権を取得した日から1年を経過するまでの間において、老齢・退職を支給事由とするもの以外の年金の受給権者となったときは、繰下げ請求は認められません。

また、平成18年4月の改正で障害基礎年金+老齢厚生年金の組み合わせを認めているので、障害基礎年金の受給権者は老齢厚生年金の繰下げが認められます。

受給権を取得してから1年を経過した後に、老齢・退職以外の他の年金たる給付の受給権が発生し、その後に繰下げを申し出た場合は、他の年金受給権が発生したところまでの繰り下げが認められます。他の年金の受給権が発生した時点を申し出とみなすことから老齢厚生年金の受給権取得から、他の年金の受給権が発生した時点までの月数に応じた繰下げ加算が認められます。支給は、申し出のあった月の翌月分からとなり、遡及適用は行われません。

繰下げ加算額は、在職支給停止の対象とはされません。

「特別支給の老齢厚生年金」は、繰下げの対象とはなりません。

平成19年4月1日前において、本来支給の老齢厚生年金を有する者については、新たな繰下げ制度の適用はありません。

平成12年4月1日以前生まれの人は、かっての老齢厚生年金の繰下げ制度が適用されますので、注意して下さい。

老齢厚生年金の繰下げは、老齢厚生年金単独で申し出することが出来ます。もちろん、老齢基礎年金を繰り下げることも出来ます。


3.70歳以上の在職老齢年金制度

1.70歳以上の使用される者(厚生労働省令で定める要件に該当する者)は、厚生年金保険の被保険者とはなリませんが、被保険者とみなし60歳代後半の在職老齢年金制度と同じ仕組みで、老齢厚生年金が一部支給停止されるか、全額支給停止される場合があります。

2.事業主は、70歳以上の使用される者(厚生労働省令で定める要件に該当する者)について、、被保険者と同様の届出(取得届、喪失届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届)の提出しなければなりません。

3.平成12年4月1日以前に生まれた者には、1.の規定が適用されないので、2.の書類の提出は必要ありません。

4.70歳以降の老齢厚生年金の支給調整の仕組みは下記の通りとなります。被保険者と同様の方法で算定した標準報酬月額及び標準賞与に基づき算出します。

・総報酬月額相当額(注)と老齢厚生年金の月額の合計額が支給停止調整額(48万円)以下の場合は、全額支給されます。

・総報酬月額相当額と老齢厚生年金の月額の合計額が支給停止調整額を超える場合は、超えた額の1/2の額の老齢厚生年金が支給停止されます。

(注)標準報酬月額+(その月以前1年間の賞与額÷12総報酬月額相当額と呼びます。

  支給停止額=(総報酬月額相当額+老齢厚生年金月額−支給停止調整額)×1/2×12

  在職老齢年金支給額(月額)老齢厚生年金月額−上記支給停止額
月額

※支給停止額が老齢厚生年金から加給年金額を除いた額以上であるときは加給年金額を含めた在職老齢年金の全額が支給停止されます。

【事例】
昭和15年4月2日生まれ、69歳時の月額報酬額60万円、賞与0円、70歳時の月給38万円、賞与0円、老齢厚生年金の支給額120万円の役員の場合

 老齢厚生年金月額  120万円÷12ヶ月=10万円
 総報酬月額相当額   38万円

 総報酬月額相当額38万円+老齢厚生年金月額10万円=48万円≦支給停止調整額
 従って、この場合、老齢厚生年金は全額支給されます。


4.中高齢寡婦加算の見直し

【改正前】

夫が死亡した当時35歳以上65歳未満であって、遺族基礎年金の加算対象となる子がいないため、遺族基礎年金を受けることが出来ない妻には、40歳から65歳まで中高齢寡婦加算額が遺族厚生年金に加算して支給されます。

また、35歳に達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けている妻には、遺族基礎年金が支給されなくなったときに、40歳から65歳まで中高齢寡婦加算額が支給されます。(遺族基礎年金が支給要件を満たし40歳以降も支給される場合は、遺族基礎年金が引き続き支給され、支給されなくなった日以後、中高齢寡婦加算が遺族厚生年金に加算されます)


【改正後】

平成19年4月より、中高齢寡婦加算の対象となる妻の年齢が見直され、夫が死亡した当時40歳以上65歳未満であって、遺族基礎年金の加算対象となる子がいないため、遺族基礎年金を受けることが出来ない妻には、40歳から65歳まで中高齢寡婦加算額が支給されます。また、40歳に達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けている妻には、遺族基礎年金が支給されなくなったときに、40歳から65歳まで中高齢寡婦加算額が支給される」ように変更されます。

改正後は、夫が死亡当時35歳以上40歳未満で、遺族基礎年金の加算対象となる子がいないため、遺族基礎年金を受けることが出来ない妻は、中高齢寡婦加算を受給出来なくなりました。

また、子がいるため遺族基礎年金を受けている妻が35歳以上40歳未満で、子がいなくなり遺族基礎年金が支給されなくなったときは、中高齢寡婦加算を受給出来なくなりました。


5.30歳未満で子のいない妻の見直し

【改正前】

夫が死亡した場合、妻の年齢、子の有無に関係なく、原則として終身遺族厚生年金を受給することが出来ました。

また、夫が死亡後遺族基礎年金を受給中の妻が30歳になる前に子が死亡し、遺族基礎年金を受給できなくなっても遺族厚生年金は、原則として終身受給することが出来ました。

【改正後】

平成19年4月以降は、夫の死亡当時30歳未満の子がいない妻に対しては、遺族厚生年金が5年間の有期年金に変更されます。

また、夫死亡当時子がいるため、遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権を得ていた妻が30歳に到達する日前に子が死亡し、遺族基礎年金の受給権を失った場合も、遺族厚生年金の受給権は、遺族基礎年金の受給権を失った日から5年を経過したときに喪失することとなりました。

夫の死亡時30歳未満で子のいない妻又は30歳になる前に子が死亡し遺族基礎年金の受給権を失った時などは、子を養育する必要がないか、なくなるので、労働することを奨励し、年金に頼らない生き方を奨励していると考えられます。


6.離婚時等の年金分割

平成19年4月以降、離婚等に伴い年金分割が可能となります。妻が専業主婦の場合と共働き世帯の場合に分けて説明します。

(1)   妻が専業主婦の場合

妻が専業主婦の場合、分割されるのは夫の厚生年金のみです。平成19年4月以降に離婚した場合、平成19年3月以前の分も含めて、結婚した時から離婚するまでの間の厚生年金が、協議の上最大2分の1分割が可能となります。分割割合の協議がうまくいかない場合は、裁判所が分割割合を決定することとなります。

分割割合の協議がまとまれば、また、裁判所の分割割合が決定すれば、社会保険事務所に厚生年金分割の請求をします。

(2)   共働き世帯の場合

共働き世帯であっても、厚生年金を分割する話ですので、妻が自営業者等で、厚生年金保険に加入していない場合は、妻が専業主婦の場合と同様、夫の厚生年金を協議の上最大2分の1分割することとなります。

妻が厚生年金保険の加入者である場合は、協議の上、結婚してから離婚するまでの2人分の厚生年金の合計の最大2分の1まで分割することが可能です。協議の結果、2分の1分割すると決定すれば、通常は夫の厚生年金の方が妻の分より多いでしょうから、

(夫の厚生年金―妻の厚生年金)÷2

の金額が、夫の厚生年金から減額され、同額が妻の厚生年金に上乗せされます。

分割割合の協議がうまくいかない場合は、裁判所が分割割合を決定することとなります。

平成19年3月以前の離婚による年金の分割では、元夫に年金の受給権があったため、元夫が死亡した場合は、年金の受給権も消滅するため、妻の分割分も消滅していました。これに対し、新制度では、年金受給権は、元夫と妻に分かれるため、元夫が死亡しても、妻の年金受給権はなくならず、引き続き年金を死亡するまで終身受給することが出来ます。

(注1)    上記(1)及び(2)とも平成19年4月以降離婚した場合の規定ですので、平成19年3月以前に離婚した場合は、対象外です。

(注2)    今回の離婚時等の年金分割は、「厚生年金の分割」の話ですので、夫婦とも自営業の方は、対象とはなりません。                                    

【留意事項】

  (1)   25年要件

妻が老齢厚生年金の分割分を受給するためには、老齢厚生年金の受給要件を満たす必要があります。分割をうけた期間は「厚生年金保険料を支払った期間」と見做されますが、老齢厚生年金の受給要件の一つであるいわゆる25年要件(国民年金の保険料払済期間+保険料免除期間=25年以上)の年数には算入されません。従って、25年要件を満たすため、第1号被保険者の期間は、毎月の保険料を必ず支払うこと、第3号被保険者の期間は、その届出を必ず提出しておくことが大切です。

(2)    60歳代前半の老齢厚生年金

60歳代前半の老齢厚生年金の受給要件を満たしていれば、60歳代前半の老齢厚生年金も分割の対象となります。但し、定額部分は除きます。60歳代前半の老齢厚生年金の受給要件のうち、「厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あること」という条件の「1年」には、離婚時等年金分割により「厚生年金保険料を支払った期間」は算入されません。従って、妻自身が厚生年金保険料を実際に支払った期間が1年以上あることが必要です。

(3)   離婚時等

離婚時等の年金分割の「等」には、夫が行方不明となり、所在が知れない場合も含まれる見込みです。

(4)   受給資格

  年金分割を受けた者は、自身の厚生年金受給資格(老齢・障害等)に応じた年金を受給することが出来ます。すなわち、年金分割を受けた者は、自身受給資格に定める老齢に達するまで、老齢厚生年金を受給出来ません。

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